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会社やお店をはじめる前の準備

顧客のニーズと顧客視点の発想 ~会社やお店はお客様のためにある~

 会社がお店が事業として成立するには、お客様の存在が不可欠です。つまり、会社やお店をはじめたらお客様に来てもらわなければなりません。

 しかし、ここでは、まったく逆の視点から考えてみましょう。つまり、お客様のために会社やお店がある、お客様のために会社やお店をはじめよう、という発想です。

 弊社ではこれを「顧客視点の発想」と呼ぶことにしますが、お客様の側に立ってどのような会社づくり、お店づくりをしたらよいか、ということを心がけると、実は非常に経営効率も良くなるのです。

 従来は、会社やお店がお客様の求めるモノやサービスを提供するというものでしたが、現代の多様化した社会において、お客様のニーズにぴったり応えることのできるモノやサービスを企業が提案することは難しくなってきました。近年では、趣味や嗜好、志向、思考の範囲が非常に広がり、核家族の増加など家族環境も変化しています。このような急激な社会の変化に対して、企業側の視点でモノやサービスを提供しても、「売れなかった」ということが多々あります。それは、企業側に都合のよい、採算性の良いモノづくりをしてきたからです。しかし、戦前、戦後のモノが足りない時代ならともかく、お店はどこにでもあり、自動車でどこにでも買いに行くことができ、そもそもお店に行かなくても自宅でインターネットによって通信販売もできる現代において、自社のモノを手に取ってもらうどころか、見てもらうことも困難になってきています。いくら自社が特別な技術を発明したとしても、この不況の現代ではなおさら、必ずしも多くの消費者のニーズに合った価格・サービスとは限らないのです。

 また、同業他社が多数あるなかで、自社のモノやサービスをお客様にアピールしていくには、これまでの自社の広告宣伝による努力だけでは限界があります。

 そこで、もし自分がお客さまだったとしたら、どんなモノが欲しいか、どのようなサービスがあったら嬉しいかを考え、それを事業化する、という発想を持つことができるでしょう。同じように考えている人が地域で、または全国である程度の人数がいるのではないかと予測できれば、それは事業として成立する可能性がありますし、もし、まだ誰も事業化したことのないニッチな事業であれば、大成功する可能性もあるかもしれません。

 中小企業や個人事業であれば、大企業がすでにシェアを握っている市場に参入することは困難ですから、なおさら新規事業で勝負に挑むべきです。もっとも、新規事業といっても中小企業はもともと大きな資本がないことから、創業時から過大な投資をすべきではなく、失敗したら早期に撤退できる途も残しつつ、新規事業計画を立てることも必要でしょう。「小さく生んで大きく育てる」が中小企業や個人事業の鉄則です。

 「顧客視点の新規事業」といっても、まったく異次元の分野や特許や実用新案の技術を考える必要はありません。日常生活でちょっとした「こんなモノやサービスがあったらいいな」のアイデアで構わないのです。

 この景気の悪化において高額商品の売れ行きが渋いのは誰もがご存じでしょう。しかし、高額商品であっても必ずお客様のニーズはあるのです。

 ブランド物の時計を購入する人は、「時刻が知りたいから時計を買う」のではありません。その品質に満足したり、モノとして持つ喜びであったり、ステータスとしてであったり、ひとつの資産として購入するのです。

 ロレックスなどのブランドの時計は、安くても50万円以上、たいてい100万円前後します。こういった商品を実物を見ることも触れることもできないインターネットショップで売ることは可能でしょうか。
 普通の人は、なかなか難しいのではないか、と思うでしょう。偽物を売っているのではないか、傷だらけの中古を新品として売っているのではないか、などと思うかもしれません。  真偽についてや商品の状態については画像である程度説明することができますが、小さな傷の状態まではパソコン上からは読み取ることができません。

 東京にブランドものの腕時計を販売しているお店があります。このお店はインターネットショップしかなく、実際の店舗はありません。しかし、このお店は、「だれの手にも触れられていない」をキャッチコピーにしてインターネット上で非常に評判の良いお店です。
 腕時計は肌に直接着用するものですし、100万円も支払うものであれば髪の毛ほどの傷が付いていたとしても気になるものです。通常の時計点ではお客様が何度も試着するために、多少なりとも傷がついたりするものですが、オンラインショップに限定すればその心配もありません。場合によっては正規代理店よりもキレイな商品を届けることも可能なのです。
 またこのお店は、対面取引ができない分、顧客に対してきめ細やかな対応をしています。お客様とのやり取りは必然的にメールが中心になりますが、すべてをメールで済ませてしまうのではなく、メールで簡単に伝えることができることも、あえてお客様に電話をしてお客様の不安を取り除いています。もちろん、メールの対応も素早いものです。お客様としては、一般的には知名度としてはほとんどゼロのお店に対して、商品の代金として何十万円もときには数百万円も振り込みをしたのに、入金の確認は翌日のメールで、では心配です。そこで、自分がお客様ならこういったときにはすぐにメールが欲しいな、メールより電話が欲しいな、と思うときを予想して的確に対応することができれば、そいった不安は払拭され顔の見えない取引であったとしてもお客様の信頼を得ることができるでしょう。

 このお店は、時計専門誌はおろか、あらゆる広告も一切見かけません。それでも、上記のようなニーズを的確にとらえ、信頼を得られる対応により、インターネット上の口コミだけで人気の店舗となっているのです。そして一度購入した人は何度も購入しますし、他の人へ勧めます。その相乗効果によって顧客は飛躍的に増大し、おそらく地域の正規代理店よりも相当数を販売しているものと思われます。

 このお店から学ぶことができることは、開発コストをかけなくても(むしろ、実店舗にかかるコストを抑えていますが)新規事業を手掛けて成功させることができる、ということです。

 顧客視点の発想をすることができれば、投下資本が少なくても、景気が悪くても、顧客のニーズに応える商売をすることができ、結果として、オンリーワンの会社やお店が、ナンバーワンの会社やお店になることができる可能性も秘めているのです。

 「すべての会社やお店は、お客様のためにある」という逆転の発想をしてみたらいかがでしょうか。この発想をもとに、顧客となるターゲットを設定し事業計画を策定することを、「事業ドメイン」の設定といいます。次のページでは、事業ドメインについてご説明いたします。