北海道中小企業みらい研究所
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日本では戦後の混乱期を経て大企業がもてはやされてきました。大企業のほうが安心できる、有名な企業のほうが信頼できる、との風潮があります。これは、戦後多くの中小企業が興ったものの、持続できなかった中小企業が短期間のうちに多数淘汰されたことも影響していることでしょう。また、古来から日本人は個人の個性よりも団体としての意見が尊重される国民性を持っていますから、多数に支持されている企業のほうが好まれる傾向にあったといえるでしょう。「多勢に無勢」との言葉にあるように、個人や中小・零細企業の個性はあまり重要視されないどころか、むしろ諦めに近い感情に支配されることも少なくありません。
しかしながら、近年は個人の趣向が多様化し、それに伴い企業もあらゆる趣向や志向を持つお客様を満足させるために努力を払うようになってきました。たとえば、高齢者の趣味といえば昔はゲートボールが王道でしたが、現代では海外旅行、登山、カラオケ、ダンス、料理教室など娯楽の分野が格段に広まりました。結婚適齢期の婚活パーティーよりも、高齢者の出会いのパーティーのほうが多くなってきたように思えます。「老後」という表現も「第二の人生」と置き換えられるようになり、十分な時間と貯蓄があることから、非常に旺盛な消費欲を持っている世代として企業も高齢者の市場を無視できず、高齢者向けのビジネスはますます活況になっています。
若い世代の趣向も多様化してきました。1980年代や90年代くらいには、多くの若者は、海外旅行に行ったりスポーツタイプの自動車を運転することが好まれていましたが、現在では携帯電話やパソコンに置き換わっています。漢字検定をはじめとする多くの資格検定や道の駅めぐりなどがこれほどブームになるとは誰も予想していなかったことでしょう。一方で、そもそもさしたる趣味がないという若い世代も非常に増えてきました。今後はこういった人たちに対しても人生の「楽しみ」や「喜び」を提供することができる企業が躍進していくことでしょう。
「大は小を兼ねる」といいますが、こと企業においてはその言葉は当てはまりません。大企業がそのような時代の変化の波に直ちに対応することは困難ですし、個性が多様化したお客様ひとりひとりのニーズに応えていくことも極めて難しいからです。大企業が新規事業を開始するには、取締役会議にかけて何度も協議し、本店の従業員のみならず支店の従業員、下請け企業、取引先まですべての関係者に意思伝達させるには相当の時間と費用を要します。また、何万人といる自社の顧客ひとりひとりに対して、顧客に合わせたきめ細やかなサービスを提供することは困難となってきています。地方や地域によって好まれるモノやサービスが異なることもあり、大量生産、薄利多売を通じて規模の利益を追求する大企業が万人を満足させることはできません。
その点、中小零細企業はお客様ひとりひとりのニーズに応えやすい環境にありますし、アイデアも実行に移しやすいという利点があります。会社員を対象にしたモノやサービスのお問い合わせ窓口が午前9時から午後5時では、顧客を満足させるサービスを提供しているとはいえないのですが、大企業であれば従業員の管理上の問題もあり、夜間や休日に対応することは困難です。また、大企業のほうがアイデアを出す絶対的な人数も多いのですが、そのアイデアも余りに多すぎると取捨選択が困難になりますし、企業内での利害関係の対立、役員間での派閥抗争など、およそお客様のニーズとはかけ離れたところで問題が生じやすくなります。
地域に密着した中小企業だからこそ、地域のためにできることがたくさんあるともいえるでしょう。大企業が海外の「どこか知らないところ」の森林を再生するために木を植えることも地球環境としては非常に意義のあることですが、社屋や店舗の前や近所の道路を清掃したり、地域の障害者施設や養護学校にボランティアとして身近な分野で関わっていくことのほうが、地域住民としては企業を評価しやすいのではないでしょうか。
「ウチは小さな会社だから」「近隣に大型店舗ができたから」を理由に大きな可能性のある企業の成長を摘み取ってしまうのではなく、「小さな会社やお店だからできる」分野を探していくならば、きっと大企業のブランドに負けない顧客満足度、信頼度を得ることができることでしょう。
起業の秘訣は、「小さく生んで大きく育てる」とよくいわれます。創業当初から過大投資しても投資の金額としては大企業に勝つことはできませんから、大企業や大型店舗の規模の利益を自社の失意の原因としたり目の敵にせずに、大企業では成し遂げられない目標を達成できる中小企業として夢を大きく持ってはいかがでしょうか。
みなさんも創業していくうちに「小さな会社には大きな魅力と可能性が秘めている」ということが十分にご理解いただけることでしょう。